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ミステリー
静かなる荒川で起きた殺人事件 第1話
私は踵を引きずりながら、河川敷へと続く道を歩いている。惨めな境遇が頭から離れず、憂鬱な気分だ。夏の熱波のせいだろうか。腐敗した卵の臭いが鼻に纏わりつく。このあたりの飲食店は、小綺麗とは言い難い。駅前の再開発が進み多少はマシになったが、強烈な負のイメージを払拭できず、業界大手のデベロッパーはついに撤退してしまった。この街は本来、私のような若い女が住むべき場所ではないのだ。 「久しぶりじゃないか。たまにはうちの店にも顔を出してくれよ。他のみんなも心待ちにしているよ。酒のラインナップも増えたしね」 この男は、ひっそりとした路地に佇む居酒屋のオーナー兼店長だ。色褪せた黒のエプロンは、水をかぶっ
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