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折り目の向こう側
「今日も遅刻しないようにしないと。」 朝7時、目覚まし時計の音が響く。山下奈央はベッドからゆっくりと起き上がり、カーテンを開けた。外は曇り空。東京の片隅にある古びたアパートの窓から見える景色は、いつもと変わらない灰色のビル群だった。奈央は心の中でそう呟きながら、台所でインスタントコーヒーを入れた。テーブルの上には、スーパーで値引きされたパンがひとつだけ。彼女の月収はおよそ16万円。家賃や光熱費、最低限の生活費を差し引けば、手元にはほとんど何も残らない。それでも、奈央は毎日渋谷のアパレルショップに通い続けている。 職場に着くと、店内には明るい音楽が流れ、キラキラとしたライトが洋服を照ら
鴻巣メンコ
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